【ポラロイド・ピンホールフォトキットを試す】
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7月初旬、日本ポラロイド社が、ポラロイド「ピンホール・フォトキット」を発売した。
メーカー説明ページ http://www.polaroid.co.jp/product/business/pinhole/pinhole.html
プレスリリース http://www.polaroid.co.jp/aboutpola/press/0106.html
今回、同社のご好意で、試用する機会があったので、感想レポートをアップした。
【ポラロイド・ピンホール・フォトキットの意義】
ポラロイドの簡単で安価なピンホールキットができた、ということは、大変な意義と存在価値があることなのだ。なぜなら、ピンホール写真の初心者が、取り付きやすくて、かつ継続しやすい、ピンホールカメラのシステムだか
らだ。
ピンホールカメラのボディは箱や缶で簡単に手作りできので、その感光体は、フィルムよりも引き伸ばし用印画紙が好まれている。フィルムを使うには、給送装置が不可欠で工作が難しくなるからだ。
だから、ピンホール写真のワークショップは、大抵、モノクロームの印画紙を使う。ボディの箱や缶の中にテープ等で、印画紙が1枚ずつ装填される。撮影したら暗室に戻って現像し、次の印画紙を装填しなければならない。つまり連続撮影もできないし、暗室がそばに無いと駄目ということだ。そして、できた印画紙ネガをポジ画像にするためには、密着焼きの技術も必要になってくる。
実は、ピンホール写真に興味を持って、ワークショップに参加しようという熱意のある人の大半は、全く写真は初心者であり、暗室も未経験者である。ワークショップで、いかにピンホール写真に感動しても、参加してみて良かったと思ってくれても、その後、自分で続けることができる人はまれなのだ。つまり、暗室(押入暗室でも何でも)を作って、バット、現像液、停止液、定着液、さらには引き伸ばし機?まで準備せねばならない。
モノクローム写真の経験者でもない限り、これらを自分で準備し、頻繁に暗室作業をするのは、大変なストレスだ。そこまでして、ピンホール写真を続けてみたいと思う人は何人居ただろうか?
一眼レフボディーにピンホール付きキャップを付けて、普通のフィルムで撮影する方法もあるが、ネガ面積が小さいし、構造的にワイド画面ができない。DPEが上がってこないと成功したのかも分からない。
だが、今回のポラロイドは一気にそれらの難点を解決してくれた。暗室が無くともその場で、ピンホール写真
の出来をすぐにチェックできる。暗室は必要ない。家に戻らなくても、フィルムの続く限り、連続撮影ができる。だから、撮影者は、ストレスなしに、自分のセンスを生かしたピンホール写真作りに専念できるのだ。これは、ワークショップ経験者が次に自分のピンホール作品の制作ステップ用道具とするのに好都合である。
もちろん、まったくの初心者にも向いている。 小さな針穴だけで鮮明な画像が出る、純粋な驚きを体験して欲しい。
これまでも私は、ピンホール写真にポラロイドフィルムを使ってみようとは思っていた。だが、今まで発売されたポラロイドカメラを改造するか、4×5用のポラロイドフィルムバックを使うかのいずれかの方法しかなかった。どちらも費用がかさむ。利用するピンホールカメラが限定される。
ところが今回のキットは驚くほど安価だ。本体は紙を折り曲げて使うが、ポラロイドフィルムの給送部は実機で、しっかりした作りだし、三脚台座も、ピンホールもしっかり造ってあって、仮に、本体の箱が駄目になっても、自分で、缶や木製の箱に応用できるようになっている。これもたいした物だと思った。
【制作してみて】
割と簡単だった。急げば30分でできる。 注意点としては、箱を折り曲げるのは慎重に。説明書通りやれば、ほぼ光漏れはない。説明書の手順は、光漏れ対策に随分重点を置いている。新しいピンホールカメラを使うときには、いつも光漏れに苦労させられるので、この説明書を書いた人は、きっと経験者だと思う。ピンホールが2種類ついていたり、エアーリングボックスがあったり、両面テープやブラックテープも十分な量が同梱されていて、細かいところまで配慮されたキットだと思った。
三脚台座の取付は、両面テープが主体なので、しっかり付けること。(今回、縦位置で撮影した時にずれて画像がぶれてしまった)

【露出の決定】
箱を測定すると、ピンホールからフィルム面の距離は80mmだった。2つ、ついていたピンホールのうち、0.3mmφの方を使ったので、f値は、約f250になる。今回は撮影時にきちんと露出計(入射光式)で測定した。普通の露出計はf90までしかないので、f90での露出秒数の値を8倍にした。(f250はf90より3段暗い:2の3乗)
ポラロイドは、セピアフィルム(タイプ606)とカラー(タイプ669)を使ってみたが、上記の計算露出時間を正確に守った方が良い結果を得られた。目安として、快晴の戸外なら、タイプ606なら3−5秒、669は5−10秒という時間だ。窓辺でも室内で撮る時は、全く露出が違うので注意が必要。作例のトマトの場合では35秒の露光を与えたが、まだ少しアンダーだった。
普通、単体の露出計は持っていないだろうから、トライアンドエラーを覚悟して、換算表から露出時間を決めて、何度か撮ってみるか、手持ちの一眼レフカメラで測光できれば、換算して、計算することもできる。F8での露出時間に1024倍する。2の10乗だ。または、F16なら256倍。もちろんアバウトで良い。たとえば、8秒の露光と10秒の露光では大差はない。
注意:明るいと数秒の短い、露出時間になる。シャッター代わりのテープをはがすときと付ける時には、慎重に。時間が短いとカメラ本体の振動が画像に影響するからだ。また、戸外撮影時は、エアーリングボックス(付属)は必ず持っていくこと。現像直後は湿っているので、重ねられないからだ。
【作例】 描写力としては、印画紙ネガでは得られないクオリティーがある。フィルムの描写力に近い。 今回限定発売のセピア606は、不思議な趣きがある。 なかなか好きな色調だ。 カラーの発色は、レンズのあるカメラより素直な発色をする。これは、普通のフィルムと同様、レンズ特有の色収差が、ピンホールでは、ありえないので、素直な発色をするのだと思う。
以下の作例は、散歩しながら撮った、船橋や津田沼周辺の風景である。
(2001年8月)
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窓辺のトマト 2001.08.12 TYPE606
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舟溜まり 08.16 TYPE669
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漁港 08.16 TYPE669
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路地 08.19 TYPE606
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ケヤキ 08.19 TYPE606
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庄司ヶ池の杜 08.19 TYPE606
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