Essay


【Yacht in the windy bay -風の港-】

 


朝早く台風は過ぎた。空は急速に晴れ渡った。

しかし、正午を過ぎても、風は依然強く、湾内は波立っていた。

ヨットは激しく左右にローリングしていた。

瞬間的な啓示。 全身に電気が走る感覚。

次の瞬間、ヨットの舳先に向けて広角ピンホールカメラを向けていた。

 

 

     撮影 1998年11月  船橋港

     露光時間 約1分

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Essay


【三 番 瀬】


 Fishing 2000 果たしてここに広がっているものは「海」なのだろうか。はるか昔から、我々が普遍的な概念だと信じていた、「海」と同じものか。  


 遠浅の東京湾東側は、埋め立てるのに条件が良く、加速度がついて自然を破壊しつくしてきた。三番瀬は東京湾内奥部に残された、唯一の干潟・浅瀬だという。干潟が海水の浄化にどれほど貴重なシステムか、ということは今でこそ声高に言われているが、30年前には、誰がそんな事を言ってくれただろうか。  

我々が20世紀後半で失ったものは、それ以前の4000年間で失ったものの何倍になるのだろうか。

 人間はほんの罪滅ぼしのつもりか、人工海浜を作った。が、しょせん人工だ。15年経ったら、砂は逃げるし浜は陸地化が進んでいく。地貝の分布もどんどん変わった。観光潮干狩り客用には、九州から運んだアサリを毎日撒くそうだ。Ray from the Sea 1998

幸い、有明と違って、ここの海苔はまだ収穫できている。渡り鳥も大量に来る。だが、この人工海浜や堤防に何度来ても、本当の自然と接したときに受ける「やすらぎ」の気持ちは得られない。すべてが虚構に見えてしまうのだ。

 これらのモノクロームも虚構だろう。美しく撮れすぎた。

(2001年3月)

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