Essay


【- 青 潮 -】

 長年、汚染の進んだ東京湾のそばに住んでいながら、青潮を見たのはこの時が初めてだった。
谷津干潟から東京湾に流れ込む、小さな流れがある。時期によっては、ボラの稚魚が群れている川だ。その水が異様な色に染まっている事に気づいた。 家内が入浴剤みたいだと言った。明るい緑がかった水色、あるいはコバルトブルーだった。
 それから湾岸に出て、茜浜へ行ってみた。海が一面そのコバルトブルーになっていた。これが青潮かと初めて気づいた。

 青潮というイメージから、もっと暗い青色、藍色を想像していた。無酸素の死の海は、明るい南国のさんご礁のようなブルーで、実態と見た目の美しい色のギャップの戸惑った。

 どこから来たのか、単独ツーリングのライダーがいた。
「綺麗ですね。」と話し掛けてきたので、これは実は青潮で、海中の魚や貝にとって地獄の海なんだと言うと、「そうですか。」と改めて海を見つめていた。

 そんなコバルトブルーを掻き分けて、レジャーボートが、水上スキーを引いて走り去った。

     

撮影 2001年7月  習志野市 茜浜

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